国債市場特別参加者会合(第41回)
| 開催日 | 2011-11-18 |
|---|---|
| 場所 | 財務省 第3特別会議室 |
| 議題 | (1) 平成24年度予算に伴う国債発行計画について〔参考配布:資料〕 (2) 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて |
| 原文 | 財務省サイトでは公開終了(本ページはアーカイブから復元) |
配布資料
| 資料PDF |
議事要旨
(1) 平成24年度予算に伴う国債発行計画について〔参考配布:資料〕
はじめに、理財局から、平成24年度予算に伴う国債発行計画について、以下のように説明を行った。
(平成23年度の発行計画について)
・本年度においては、今後、第4次補正予算が編成されるかどうか確たることは言えないが、仮に行われるとしても、「発行根拠法別発行額」において大きな変更が行われることは想定していない。また、「消化方式別発行額」においても、直近の第3次補正で実績を反映していることから、大きく見直すようなことは考えていない。
(平成24年度の当初計画について)
・平成24年度の発行計画において、現時点でわかっていることは次のとおり。「発行根拠法別発行額」において、復興債を除く新規国債発行額については8月12日に閣議決定された中期財政フレームによると、「平成23年度当初予算の水準(約44兆円)を上回らないものとするよう、全力を挙げる」こととされている。復興債については、概算要求において、東日本大震災からの復旧・復興対策に係る経費が3.5兆円要求されていることから、その範囲内で発行されることとなるものと考えられる。借換債については、概算要求において、平成23年度当初よりも約2.8兆円増の114.1兆円要求されている。なお、この中には、買入消却の財源となるものは含まれていない。財投債については、財投計画の規模や財投償還金及び財融回収金、預託金の見通し等によって決まってくる。財投計画については、概算要求において、平成23年度当初計画より0.9兆円増の15.8兆円が要求されているが、今後震災復興対応としての追加要求が見込まれており、平成23年度当初の14.0兆円に比べるとある程度増額となる見込みとなっている。
一方、本年度に発行する来年度分の借換債である前倒債については、先般行った第3次補正に伴う国債発行計画の見直しに伴い大幅に減額することとなったため、4.1兆円程度発行することが見込まれている。したがって、平成24年度当初の「消化方式別発行額」における「前倒債発行減額による調整分」は、この範囲内で行われる見込みである。
いずれにせよ、現在のところ、来年度の発行計画について確たることを言える状況になく、本日の会合では、今後の様々な状況に的確に対応できるよう、増減可能な年限、その他要望事項等について、幅広く皆様のご意見を承りたい。
4出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。
・来年度は、カレンダーベース市中発行額全体で2兆円~2兆円強の増額を想定している。20年債までの各年限については毎月発行の下で安定している一方、30年債及び40年債については毎月発行でないにも拘らず不安定さが残ることから、次は30年債の育成が課題と考えている。具体的には、月の発行額を1,000億円程度減額した上で毎月発行とすることを提案する。併せて、40年債の発行月はポートフォリオ上の長期化ニーズがある5、8、11、2月とするとともに、当該月に実施される残存15-29年を対象とする流動性供給入札を1,000億円減額することが望ましい。この点、5、8、11、2月各月の30年債、40年債及び流動性供給入札の発行額は合計1.5兆円となるが、これまで上記以外の月に1.3兆円消化してきたことを踏まえれば、2,000億円程度の増額は安定的に消化できるのではないか。なお、30年債を毎月発行とする場合、20年債については現状維持が望ましい。また、2年債については、直近の需給状況及び日本銀行の資産買入等基金による残存1-2年の利付国債の買入額が増額されたことを踏まえると、月1,000億円程度の増額余地がある。これらを合計すれば、2兆円強の増額が可能となる。更なる増額が必要となる場合には、5年債または10年債を増額すればよいのではないか。
物価連動債については、依然として投資家の売却ニーズが見られる上に市中残高が相応に残っている状況下では、新商品に取り組むことは難しいと考える。また、発行再開にあたってはシステム対応も必要になるため、投資家との対話を通じて需要を慎重に見極める必要がある。物価連動債は海外投資家の保有比率が高く海外のイベント等に対して脆弱な面があったことから、国内投資家の安定した需要が必要であり、海外投資家のみならず国内投資家の意見も聞いた上で慎重に検討すべきではないか。
買入消却について、15年変動債は依然として市中残高が大きく理論価格と市場価格が大きく乖離している銘柄が多いことから、買入のペースを早めてはどうか。
・第3次補正予算に伴い増額した2年債及び5年債を除き、10年債から40年債までの全年限で月1,000億円程度の増額余地があり、仮に増額しても数bp程度の調整で済むと考えている。敢えて優先順位をつけるならば、今月の入札結果が強かった40年債を増額してはどうか。なお、40年債については、現行の利回りダッチ方式から価格コンベンショナル方式への移行も併せて提案する。30年債については、月の発行額を6,000億円に抑えた上で毎月発行とすることを提案する。10年債及び20年債については、増額の優先順位は特にない。また、第Ⅱ非価格競争入札を取り止め、その分10年債から40年債までの全年限を増額してもよいのではないか。この場合、第Ⅱ非価格競争入札における落札額が大きい2年債を増額してもよいと考える。
物価連動債については、フロアを付与すればニーズがあると考えていることから、既発債と入替える形での発行再開を強く希望する。
買入消却については、物価連動債、15年変動債ともに引き続き売却ニーズが見えていることから、現状規模の買入額を維持してほしい。
・2年債から30年債までの各年限は月1,000億円の増額は可能と考えており、発行年限のバランスを考慮すると、20年債、10年債、2年債の順に増額を優先すべきと考える。その次に30年債及び5年債が検討対象と考えられる。この点、30年債については、仮に増額する場合であっても発行頻度は現状維持としてほしい。30年債及び40年債は需給が不安定である中、投資家層も重なることから、40年債入札が実施される月に30年債入札は実施すべきでないと考える。
物価連動債については、現状国内投資家のニーズが継続的に出てくる環境ではないとみており、来年度発行計画に計上する段階にはない。もっとも、海外投資家の声も踏まえれば、本会合等で継続的に検討しながら発行再開の時期を探っていくべきと考える。
買入消却については、仮に今年度と同額の3兆円規模での継続が難しい場合でも、15年変動債については現行の四半期当たり6,000億円程度の買入ペースを維持してほしい。物価連動債については、買入消却に対するニーズも徐々に減少してきていることから若干の減額は可能と考える。
・20年債及び30年債については、それぞれ月1,000億円の増額が可能と考えるが、足元の需給環境に鑑みれば20年債の方が望ましい。また、10年債及びT-Bill1年物についてはそれぞれ月1,000億円、第3次補正予算に伴い増額されている2年債及び5年債についても更に1,000億円程度の増額は可能と考える。この点、発行年限の長期化も勘案すれば、20年債、10年債及びT-Bill1年物の増額をまずは優先すべきであり、更なる増額が必要な場合には2年債、5年債の順に増額すべきと考える。
30年債については、増額の有無に関わらず発行頻度は現状維持としてほしい。毎月発行とした場合には、40年債入札と重なることが懸念材料である。足元の環境に鑑みれば消化可能とは思うものの、今後のマーケット環境如何では厳しくなる可能性も考えられる。また、40年債については投資家の開拓途上にあると考えていることから、40年債入札に皺寄せが来ることは避けてほしい。
物価連動債については、フロアの付与等商品性を改善した上で将来的に発行を再開すること自体には賛成であるものの、来年度早々からの発行再開にはやや懐疑的である。エクスチェンジオファー等の機会を設けることにより既存の物価連動債に引きずられる形で新商品が値崩れするリスクは回避できると思われるが、継続的に発行していくためには恒常的な投資家ニーズが必要と考える。一部の海外投資家にはニーズがあるとのことであるがそれだけでは心許なく、やはり国内投資家からのしっかりとしたニーズを確認した上で発行を再開してほしい。
買入消却については、現状維持を希望する。もっとも、買入総額の減額が必要となる場合には、15年変動債、物価連動債とも足元大きく値崩れする状況にはないことから、多少の減額は止むを得ないと考えている。
・カレンダーベース市中発行額全体で2.4兆円の増額と想定した場合、20年債、2年債の順に、それぞれ月1,000億円程度の増額を提案する。また、流動性供給入札については、残存5-15年及び残存15-29年を対象とする入札それぞれについて月1,000億円減額し年2.4兆円の減額とする一方、10年債及び30年債をそれぞれ年1.2兆円増額することで、流動性供給入札の減額分を賄うこととしてはどうか。
30年債については、月の発行額を減額した上で毎月発行とすることを提案する。具体的には、40年債入札が実施される5、8、11、2月については月5,000億円、その他の月は月6,000億円とすることがよいと考える。
物価連動債については、フロアの付与等商品性を変更した場合でも、中長期的な安定消化を図る観点からは、現状のデフレ環境下で海外投資家のみならず国内投資家の潜在需要が見込めるかどうか慎重に見極めていく必要があることから、現段階で発行計画に計上すべきではないと考える。なお、仮に投資家の乗り換えニーズに応じて既存の物価連動債の買入消却を増額する場合には、15年変動債の買入消却とのバランスを慎重に検討する必要がある。
買入消却については、物価連動債及び15年変動債の市場の安定性確保や価格の透明性維持等の観点から、今年度と同額の年間3兆円の規模は維持してほしい。もっとも、財政状況等から減額する必要がある場合、総額2.4兆円までの減額であれば市場に大きな影響は与えないと考える。この点、物価連動債については、市中残高の減少が著しいことから減額方向、15年変動債については、市中残高が30兆円超あること、市場取引規模・頻度も依然として限定的であること及びIFRS導入は延期される方向であるものの今後投資家からの売り圧力が一時的に強まる可能性も否めないことを踏まえ、増額方向で検討してほしい。
・来年度の発行額については、カレンダーベースでおよそ151兆円程度とみていることから、現状より一月当たり3,000億円程度の増額が必要と考えている。また、発行年限のバランスを勘案すると、平均年限を短期化させないためには超長期ゾーンの増額が避けらないことから、40年債の増額は厳しいと思われ、20年債及び30年債の増額を想定する。具体的には、30年債市場の育成という観点を併せ踏まえると、30年債については、現行の金利水準では特にカレントのニーズが落ちることから、5,000億円×12回の毎月発行とし総額ベースでは若干の増額に留め、その分20年債を月1,000億円増額してはどうか。その他、市場の安定性や吸収余力を考えると、2年債及び10年債に増額余地があると思われる。
物価連動債については、発行計画に載せる形で発行再開を検討してはどうか。商品設計を変更する場合システム対応等に相応の準備期間が必要となるため、早くても上期に1回発行できればよいと考えている。具体的には、上期に1回、下期に2回として、2,000億円×3回の6,000億円を発行計画に計上するとともに、丁寧な対応が必要なマーケット環境にあることから、既発債の買入消却を併せて行いつつ、市場規模を徐々に復元させ市場機能を回復させることが望ましい。下期2回目以降に更なる増額が可能か否かについては、市場の状況を見ながら本会合等で議論してみてはどうか。
買入消却については、15年変動債、物価連動債ともに売却ニーズが残存しており、特に15年変動債に係る売却ニーズは根強い。両商品とも依然として市場機能は低迷しており、新規の買い手がすぐに見つかる状況にはない。この点、15年変動債については引き続き理論価格対比で割安に推移していること、物価連動債については発行再開に向けてのコミットメントという意味も含めて、更にはJGBマーケット全体に対する当局のコミットメントを示す観点から、今年度と同額の3兆円規模の買入消却を継続してほしい。その程度の売却ニーズは十分見込めるほか、他の固定利付債の消化余力向上や物価連動債の発行再開にも繋がると考える。もっとも、今年度と異なり必ずしも3兆円を消化しなければならない状況ではないと思われることから、両商品の市中残高を勘案して、物価連動債については上期300億円×6回、下期200億円×6回の3,000億円程度とし、発行再開となった場合には買入額を増額することとしてはどうか。15年変動債については、2兆円程度の売却ニーズは優に見込まれることから、月1,300~1,500億円程度で、奇数月に2回、偶数月に1回、年18回の買入を提案する。この点、これまでは月の買入額に差異があったものの、来年度当初予算の段階では例えば1,500億円×18回とした上で、四半期毎に状況を見ながら増額・減額の要否を検討することとしてはどうか。
・来年度のカレンダーベース市中発行額は151兆円弱と考えており、20年債、2年債、5年債の順に増額の優先度が高く、それぞれ月1,000億円の増額を提案する。30年債の発行頻度については、現状維持が望ましい。20年債と30年債を比較した場合、20年債は流動性も厚みを増しており相対的に割高な状況にあるため優先的に増額すべき一方、30年債を増額する必要性は低いのではないか。
物価連動債については、インフレ期待が最も重要なファクターであり、インフレ期待のない状況下では特に国内投資家のニーズが見込み難いことから、発行再開は時期尚早と考える。
買入消却については、少なくとも15年変動債の買入額は現状維持とすべきであり、物価連動債の買入額を多少減額できるのであれば、その分を15年変動債の買入額に上乗せすることも選択肢と考える。仮に今年度と同額の3兆円規模の買入消却を継続することが難しい場合には、物価連動債の買入額を減額してでも15年変動債の買入額は現状維持としてほしい。
・来年度の増額年限について優先順位をつけるならば、20年債または30年債、次に10年債と考えている。その他の年限においても月1,000億円程度の増額は可能。この点、最終的な増額総額の規模にもよるが、第3次補正予算に伴い増額した2年債及び5年債については、発行年限の長期化という観点からすれば、月の発行額を補正前の規模に戻すことも選択肢と考える。30年債については毎月発行を希望しており、具体的には、月の発行額を1,000億円減額して6,000億円×12回とし、年間で1兆6,000億円程度の増額としてはどうか。この点、30年債、40年債及び残存15-29年を対象とする流動性供給入札が重なる月は、残存15-29年を対象とする流動性供給入札を1,000億円程度減額することを提案する。
来年度における物価連動債の発行再開については、やや慎重に考えている。海外投資家からは、フロア付与に関する要望のほか、1回の基準改定で生じる振れ幅が大きいという指摘もあることから、参照物価指数の変更等も含めて検討する必要があるのではないか。いずれにせよ、商品性を固めてからシステム対応等も含めて1年以上は準備期間が必要であることから、来年度における発行再開は厳しいと考える。
買入消却については、15年変動債、物価連動債ともに依然として売却ニーズが強いことから、基本的には現状維持が適当である。もっとも、物価連動債については、市中残高の減少に合わせて買入額を多少減額してもよいと考える。なお、物価連動債の発行を再開する場合には、エクスチェンジオファーという方法も選択肢ではあるものの、発行額相当分を上乗せする形で既発債の買入消却を実施することで事足りるのではないか。
・30年債、10年債、20年債、2年債、5年債の順に増額を優先すべきと考える。30年債については、現行の年8回の発行頻度を維持してほしい。この点、40年債については、ここまでやや流動性が乏しい状況が続いていたものの、今月の入札時に相当強いニーズが見られたように、足元30年以下の年限の金利が2%割れとなっていることもあってようやく脚光が集まりつつあることから、40年債のニーズを検証する観点からも、来年度は30年債、40年債ともに発行頻度は現状維持とすべきである。その結果として40年債に対するニーズが少ないことが判明した場合にはこれを減額するとともに、30年債をベンチマークとするため毎月発行に切り替えればよいのではないか。また、1年以内のゾーンについては、今後、外国為替資金特別会計やエネルギー特別会計でのFB増額や国債整理基金の剰余金減少に伴う国庫内引受の減少等により市中向けの増額が考えられることから現状維持が望ましい。2年債及び5年債については、報道で言われているつなぎ国債が発行されるのであれば増額対象になり得るものの、第3次補正予算において増額が見送られた長期・超長期ゾーンを優先した方が、発行年限の長期化及び将来の借換・利払増リスクの低減に資すると考えている。
物価連動債については、発行再開は時期尚早と考える。元々欧米・英国・カナダで発行された際には高インフレ時であり、当局にとって発行コストを低減するためフロア無で発行された経緯がある。その後、国際的にインフレ率が低減する中、最近は米国・ドイツ・フランスにおいてフロア付商品が発行されているが、日本の場合、当面インフレ率はゼロ近傍またはマイナス圏で推移する可能性が高いことから、市場のインフレ期待という面でニーズは少ないのではないか。また、2008年のベア・ショック、リーマン・ショック以降海外投資家の撤退が相次いでおり、足元欧州債務問題の影響等も相俟って当面大きなニーズは見込み難いことから、もう少し市場環境の改善を待つべきではないか。
買入消却について、来年度は国債整理基金積立金の圧縮という目的が薄れると思われることから、市中残高を勘案すれば物価連動債の買入額は減額可能と考える。もっとも、15年変動債については、未だ市中残高が多いことから、借換債の増額に繋がらない限りにおいて現状規模の買入を継続してほしい。
・第3次補正予算後の2年債及び5年債の月の発行額を前提とした上で、カレンダーベース市中発行額全体で2兆円台半ば、一月当たり2,000億円程度の増額が必要と想定した場合、20年債及び2年債の増額を優先すべきであり、更なる増額が必要な場合には10年債を優先すべきと考える。超長期ゾーンについては、絶対水準の低さも相俟って30年債及び40年債に対するニーズは限定的と見込まれることから、今年度当初予算で増額が見送られ足元需給環境が良好な20年債を増額することが望ましい。中長期ゾーンについては、2年債と10年債でそれほど差異はないものの、日本銀行の資産買入等基金による残存1-2年の利付国債の買入額が増額されたことも踏まえれば、2年債の方がより安定的に消化可能と思われる。短期ゾーンについては、あくまで今後の増減を調整するための年限と考えているほか、カレンダーベース市中発行額全体で減額できるのであれば、当初の目的をある程度達成したとみられる流動性供給入札は減額方向でよいのではないか。なお、30年債及び40年債が同月発行となることは好ましくないことから、30年債については現行の年8回の発行頻度を維持すべきと考える。
物価連動債については、海外投資家から発行再開について質問等は受けるものの、実際に国内投資家の需要がある程度見込めるような段階、即ち持続的なインフレを見込める環境にならないことには、発行再開は困難と思われる。今後、商品性等に係る議論を本会合等で詰めていく必要はあるものの、来年度における発行再開は時期尚早ではないか。
買入消却については、その必要性を強く認識しており、主にIFRSを巡る不透明感のある15年変動債の市中残高を減少させていく方向で、今年度と同額の3兆円規模での実施を継続してほしい。仮に財源等の問題で買入総額を減額せざるを得ないのであれば、市中残高に鑑みて物価連動債の買入額を減額する方向で調整すべきと考える。
・20年債、10年債、2年債の順に増額の優先度が高く、それぞれ月1,000億円程度の増額は可能とみている。特に20年債については、他年限対比で需給環境が良好であることから、多少の上振れも吸収可能と思われる。また、30年債については、高い利回りが確保できれば潜在的に需要は強いと見込まれることから増額自体は可能であり、市場の厚みを拡充するという観点からすれば、毎月発行とすることが最も妥当と考える。もっとも、30年債及び40年債は軟調な地合いが長く続いていることから、月の発行額を調整する必要はあるのではないか。また、一月に20年債、30年債及び40年債を全て消化することは負担も大きく、それぞれの発行頻度を議論する必要があることから、消去法ではあるものの、40年債の発行頻度を落とす余地も考えられるのではないか。
物価連動債については、フロアの付与によって商品性は高まるものの、物価見通しが上向かない中、マーケットメイクにも限界があるため、来年度における発行再開は時期尚早と考える。
買入消却については、物価連動債は市中残高が減少してきていることから減額方向、15年変動債は依然として売却ニーズが非常に強いことから現状維持とすべきであり、従前同様、市場の動向をみて四半期毎に買入額の見直しを行うべきと考える。
・第3次補正予算後対比カレンダーベース市中発行額全体で2~3兆円程度の増額を想定しており、20年債及び2年債を月1,000億円程度増額することが望ましいと考えている。発行年限の長期化という観点からすればより長い年限を増額する必要があるものの、足元の低金利下では40年債及び30年債より20年債の方が需要があり、マーケットで消化されやすい。2年債については、日本銀行による金融緩和の強化を受け需給が改善しているため、月1,000億円程度の増額であれば問題なく吸収可能と思われる。30年債については、40年債入札と重なることのないよう発行頻度は現状維持とすべきではないか。この点、40年債に対する投資家ニーズは以前より強くなっているものの、今月の入札は強い結果となった一方、8月の入札は不調となる等金利環境やその時々の需給により需要が変化し易い。このような状況下で30年債と40年債を同月に発行することは、30年債と40年債の投資家層が重複する点も勘案すると無理があり、40年債の投資家層の育成がより困難になると思われる。なお、30年債については、流動性が向上しつつあることから、年間4銘柄とすることを検討してほしい。
物価連動債については、現下のデフレ環境を踏まえると特に国内投資家の需要に懐疑的であり、来年度における発行再開は困難と考える。
買入消却については、物価連動債及び15年変動債の売却ニーズは依然として強いことから、現状程度の買入規模を維持してほしい。
・カレンダーベース市中発行額全体で一月当たり2,000億円程度の増額を想定しており、20年債、5年債、2年債の順に消化余力があるとみている。第3次補正予算に伴い中期債を増額したことから、発行年限の長期化という観点からは20年債の増額が望ましい。30年債及び40年債の投資家は現状生保のみと厚みに欠けていることに加え、入札前後で30-40年スプレッドがボラタイルになることが散見されるため、比較的安定している20年債の増額を優先すべきと考える。30年債と40年債の同月発行は、需給不安がある上入札スケジュールがよりタイトになる懸念もあることから、30年債の発行頻度は現行の年8回を維持することが望ましい。
物価連動債については、フロアを付与することで投資しやすくなると思われるものの、国内投資家の多くはリスク管理が厳しい中、システム整備をきっちり行わなければ投資できない可能性もあるため、来年度における発行再開は見送るべきと考える。
買入消却については、来年度も物価連動債及び15年変動債トータルで今年度と同額の3兆円程度の売却ニーズは見込めるものの、仮に買入総額を減額せざるを得ない場合には、市中残高が減少している物価連動債の買入額を減額すべきであり、買入額を多少落としてもマーケットにインパクトはないものと思われる。一方で、15年変動債については、依然として市中残高が多いため優先的に買入を行うべきではないか。
・カレンダーベース市中発行額全体で一月当たり2,000億円程度の増額を考えている。この点、発行年限の長期化という観点からすれば、20年債の増額を最優先すべきと考える。その他の増発可能年限としてはT-Bill1年物、2年債及び5年債が考えられるものの、いずれも強いスタンスがある訳ではない。現状超長期ゾーンでは20年債の需給が相対的に良好であるため安定的に消化される可能性が高く、中短期債も日本銀行の強力な金融緩和を背景に安定消化が見込まれる。30年債については、現行の発行頻度を維持することが望ましい。40年債入札の結果に毎回振れがあり不安定な状況にあることも踏まえると、30年債と40年債の同月発行は避けるべきと考える。
物価連動債については、海外投資家からの問合せが多く発行再開を望む声も聞かれている。もっとも、国内投資家の需要の存在が前提となるため、現時点での発行再開は困難と思われる。本会合等で商品性やエクスチェンジオファーの詳細等に係る議論を詰めていくことが重要と考える。
買入消却については、物価連動債の買入額を減額し、当該分を15年変動債に上乗せする方向で今年度と同程度の買入規模を維持してほしい。仮に買入総額を減額せざるを得ない場合には物価連動債の買入額を減額するべきであり、15年変動債の買入額は現状維持とすべきと考える。
・20年債、10年債、5年債、2年債の順に増額を優先すべきと考える。20年債については、リアルマネーに加えて様々な業態から旺盛な需要が存在し、イールドカーブ上割高になっていることからも最も吸収されやすい。10年債については、ここもとの金利水準及びボラティリティの低下を背景に中期債の需要がより長い年限にシフトしていることに加え、ここ数回の増額が2年債及び5年債を中心に行われてきた点を踏まえると、発行金額のバランスという観点からも増額余地があると思われる。また、借換増リスクの低減という観点からすれば、2年債より5年債の増額を優先すべきと考える。
30年債については、仮に増額する場合であっても毎月発行は避けるべきと考える。30年債の毎月発行が40年債に対する需要を減少させ、ひいては40年債の必要性の有無といった議論にまで波及しかねないことから、30年債及び40年債双方の市場をともに育成できるような形で発行していくことが望ましい。
物価連動債については、市場参加者のコンセンサスができていないため来年度における発行再開は時期尚早と考える。慢性的なデフレ下にある現状においては潜在的な需要を見込み難いところ、再来年度の発行再開を目標に相当程度時間をかけて議論を詰めていくべきと考える。
買入消却については、市中残高が減少している物価連動債の買入額を減額する一方、15年変動債の買入額は現状維持とすべきと考える。また、ここもと欧米を中心に金融機関のバランスシート圧縮の動きが高まるリスクがあることから、固定利付債の買入消却再開についても前向きに検討してほしい。
・2年債、5年債、10年債、20年債の順に増額を優先すべきと考える。いずれの年限であっても金利さえ負担すればいくらでも増額可能ではあるものの、無駄なリスクプレミアムを如何に抑えるかという点を考慮すべきである。この点、現状運用サイドの資金は短い年限に余っているにも拘らず長い年限の債券を発行すると、発行体は無駄なリスクプレミアムを支払うこととなる。既に超長期ゾーンのリスクプレミアムは限界にまで達していると思われる中、特に30年債及び40年債の増額は大きな金利上昇を招くおそれがあるため避けるべきと考える。なお、30年債の発行頻度についても、現行の年8回を維持することが望ましいのではないか。
(2) 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて
4出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。
・昨今の欧州の債務問題は深刻化かつ広がりを見せている。ファンダメンタルから考えるとイタリアとフランスはやりすぎではないかと個人的には考えているが、一方でマーケットに追い込まれていく形で金利が上昇して、特に債務残高の大きいイタリア等は財政赤字が発散するリスクが高まっている状況となっている。振り返って日本がどうかといえば、公的債務残高の対GDP比率が非常に高い水準にあって、ギリシャやイタリアほどではないにしても政治の基盤も弱いという状況ではあるが、足元のJGBの利回りが低いこともあって国債の増発に対する政治家の意識もどちらかといえば緩んでいるのではないかと危惧している。来年度の国債発行に絡んで、中期財政フレームの枠を遵守することが前提で進んでいるとは思うが、最近の国会の審議や与野党の話を聞いていると、これすら守ってもらえるかどうかやや懐疑的に思っている。日本がイタリアやフランスのように市場の標的にならないように、中期の財政再建に向けた強い意思表示が必要だと思っている。復興増税はやや後退という形になったが、中期財政フレームの遵守が重要である。また、消費増税準備法案についてもこれから議論が進むことになるが、これはもともと自公政権のときに方向性が決まっているし、自民党は参院選のマニフェストにも挙げていたということを考えると、上げるのが当然だと見ている。衆院解散総選挙が視野に入る中で、どうしても増税に対するアレルギーが政治家にはあるので、こうした議論が難航するようであれば、やはり日本に対する不信感が強まるリスクがある。特に国内で低い金利で調達できるという所が強みのひとつであり、それが評価されて日本の格付が比較的に安定しているので、投機的な形で海外からのJGB売りで金利が上昇するようなリスクが無いように、中期財政フレームの遵守や中期的な財政再建に向けた消費増税の確実な実施をぜひ政治にはお願いしたい。我々プライマリーディーラーも引き続き国債市場の安定化に向けて様々な提言をしたいと考えている。
・欧州債務問題からの教訓をわが国も引き出しておく必要があると考えている。最近、海外の投資家から、国債の償還年限が他の国と比べて日本はどうなのかといった、償還年限の情報についてよく照会を受ける。債務比率が高いということは既に周知の事実で、さすがにこれだけで日本がデフォルトするといった意見を言う人はいなくなり、日本国内の資金循環や純貯蓄の高さからある程度の期間は日本国債の国内消化ができるということは海外の投資家に認識されていると思う。ただ、足元で債務問題がグローバルに広がる中で、次に日本が狙われるリスクがやはり議論される。そうしたときに、そのようなリスクがあるのかないのか、計数面で債務償還年限の照会を受けることが多い。例えば、第3次補正予算では短期債・中期債を対象として増額することとしており、来年は20年債を増やすことになる可能性もあると思うが、そうした中で、日本政府として債務償還年数の目線を大体どのくらいの長さで持っていて、リファイナンス・リスクに対してもある程度注意を払っており、リファイナンス・リスクもなく、国内での消化もでき、日本国債については引き続き安定したマーケットであるということを示すことが必要ではないかと思う。
・財投債の発行を期中でどのくらい減額できるのかということを公表しても良いのではないか。財投債の発行は、財投計画の需資や財投特会全体の資金繰りとも絡んでくる問題であるが、資金繰りを全てつまびらかにする必要はないにしても、期中における進捗状況や財投債の発行減の可能性みたいなものを示してもよいと思う。
連絡・問合せ先:
財務省 理財局 国債業務課 中島・高嶋
電話 代表 03(3581)4111 内線 5701
出典:財務省