国債市場特別参加者会合(第22回)
| 開催日 | 2008-09-26 |
|---|---|
| 場所 | 中央合同庁舎第4号館 共用1202会議室 |
| 議題 | (1)最近の国債市場の状況と今後の見通しについて〔参考配布:資料1〕 (2)流通市場の課題について〔参考配布:資料2〕 (3)物価連動債の現状などについて〔参考配布:資料3〕 (4)理財局からの説明事項〔参考配布:資料4〕 |
| 原文 | 財務省サイトでは公開終了(本ページはアーカイブから復元) |
配布資料
| 資料1PDF |
| 資料2PDF |
| 資料3PDF |
| 資料4PDF |
議事要旨
(1)最近の国債市場の状況と今後の見通しについて〔参考配布:資料1〕
(2)流通市場の課題について〔参考配布:資料2〕
4はじめに、理財局から、最近の国債市場の状況と今後の見通しと、流通市場の課題について、以下のように説明を行った。
お手元には、「最近の10年新発債利回りの推移」(資料1-1)と「最近の債券先物の推移」(資料1-2)、「JGBイールドカーブ」(資料1-3)、「日米短期債利回りの推移」(資料1-4)を用意した。本年3月17日のJPモルガンによるベアスターンズの救済買収の発表を境に、本年4~6月にかけては国債金利の上昇(先物価格の下落)がみられた後、本年7月以降は「景気後退懸念の台頭」による国債金利の低下(先物価格の上昇)という大きな流れが確認できるかと思われる。
こうした中、9月15日には米国においてリーマンが破綻し、国債市場においては、先物価格が乱高下しているほか、現物取引についても決済が滞るなどの混乱が生じていると聞いている。加えて、短期金融市場ではGCレポレートが高止まりするなど、全体として不安定な市場になっていると理解している。
なお、資料1-5は、9月16日及び22日の国債発行について、額面ベースと発行収入金ベースの金額を取りまとめた表である。今回のリーマン破綻にともなう不足分のうち、資金繰り債である政府短期証券以外のものについては、前倒債の減額により対応したいと考えており、今後の各年限の発行増は検討していない。なお、政府短期証券分についても、国庫の資金繰りで処理できる範囲であり、特段の問題は生じなかったところである。
流通市場の課題については、過去の本会合においても幾度かご議論頂いており、市場参加者それぞれのお立場から様々なご意見があることは私共としても認識しているところであるが、最近の不安定な市場の状況を踏まえて改めてご意見をお伺いしたい。
資料2-1は、そうした国債の流通市場を巡る課題のうち私共が認識しているものを例示したものである。一つ目として「先物市場の改革」を挙げているが、最近、先程の議題で用いた資料1-2にも示されているとおり、国債先物市場の値動きが現物市場の値動きと乖離した極端な動きになっているとの指摘が聞かれており、制度面での改善の余地があるのかご意見を頂きたい。二つ目には、「レポ市場の機能向上」を挙げているが、フェイル慣行の定着が以前から論点になっていると認識している。また、三つ目には「流動性の向上」を挙げているが、原則リオープンの取扱いのほか、流動性供給入札や買入消却の活用などが財務省の関係する具体的な施策になるかと考えている。この他でも、皆様お気付きの論点があれば、是非ご指摘頂きたい。
なお、資料2-2以下は既にご案内の内容であるが、本年度のカレンダーベースの市中発行額、買入消却の予定額、7~9月の流動性供給入札の実施方法、そして、過去の本会合及び国債投資家懇談会における流通市場に関する議論の抜粋を用意した。今年度下半期の流動性供給入札の在り方等について、皆様のご意見を頂きたい。
4出席者から出された意見等の概要は以下の通り。
【最近の国債市場の状況について】
・現状、JGBマーケットで「質への逃避」が起こっているのかと言えば、サブプライム関連で日本の金融機関の財務状況が大きく悪化している訳でもなく、米国と同様のことが基本的に起きることはない。
・相場がこれだけ大きく動くとトレードがしづらく、例えば外国人投資家のトレードも実際減っているなど、日本国債離れもあると考えている。
・米国では「質への逃避」は起きていると思うが、日本国内では、特に現物など比較的冷静に動いていると思う。ただ、先物に関しては全く別になっている。
・今回のリーマンの破綻を受け、現場では大混乱が生じた。現実にはフェイルは多発したが、投資家のほとんどがフェイルを中々認めてくれないという状況であり、日々トレードを行う中で、特にレポディーラーにはストレスのかかる状況が現在も続いている。
また、一部銘柄でレポレートが▲10%などとなっているが、それでも、今目の前にあるレートで取らないと顧客との関係が切れてしまう。そういった恐怖感の中でショートカバーをしなければならないという状況が続いている。
・短期の資金調達コストが上昇しており、その中でコールレートとレポレートが二極化しつつ、全体の水準が切り上がってしまっている。このため、FB利回りの上昇という形で影響が生じている。
・マーケットでは、3月中旬から「質への逃避」が世界的に起きるなかで、日本では先物の独歩高が始まり、レラティブバリュー系の崩壊によりリスクリダクションが発生し、レバレッジの資金が逃げていくという負の循環の中で、全てのマーケット参加者のリスク許容量が徐々に減退してきている。現状のイールドカーブの5年から10年に限って見ても、かつて経験したことのない程、7年のボラティリティが大きくなり、相関性が失われている。
・今回は様々な問題が複合的に生じており、何か一つ大きな対策ですべてが解決出来るとは思っていない。
【先物市場の改革について】
・先物の商品設計に関しては、以前、想定クーポン6%が実態と比べて高過ぎることで、チーペスト銘柄が非常に限定されてしまうため、想定クーポンを下げてはどうかという議論があったが、逆にデリバリーオプションの問題が発生してしまうという指摘もあり、なかなか結論を得られなかったことがあった。現時点で同じような議論をしても結論は一緒ではないかと思う。
・長期国債先物の標準物の想定クーポンが6%であるため残存7年がチーペストになっているが、5年債と10年債が発行される中ではちょうど真ん中に先物がある状況となっており、これまで上手く機能してきたということからも、標準物の設定変更についての議論はまた別の話だと思う。
・先物の歪みは、チーペストのスクイーズが要因ということではなく、数年前と比較し建玉の分布が海外勢のトレンド追随型に偏ったことが原因である。それらの参加者はチーペストの現物債の受渡しを伴わず必ずロングロールを継続してきているが、今年3月の暴落以前はこのフローに対しアービトラージャーやマーケットメーカーによってショートに向かうフローが入り、マーケットのバランスが保たれていた。
現状のマーケットで起きている構造的な問題は、先物のヘッジ機能が低下し、発行市場や流通市場におけるヘッジツールとして機能していないことである。しかもリーマンの破綻以降、外資系証券の市場参加者に対するレポの与信ラインの制約が非常に激しくなっている。そういう意味でも先物に加えて既発債がヘッジツールとしての機能を求められており、これからの入札やセカンダリーの業務にあたっては、ヘッジツールの流動性の低下はかなりの問題になると考えている。
短期的な施策という意味では、チーペストのスクイーズというより建玉の偏在によって起こっている先物の割高をある程度修正する、或いは実質的に先物の売りポジションを間接的に増やすことによって、安心してショートできる先物を取り戻すことが必要ではないか。長期的には先物の商品性そのものの見直しが必要かもしれない。また、偶然先物が極端に売られる局面で、前々回の日本銀行の買切りオペが行われたが、その際12月限りの受渡適格銘柄が対象となり、ある程度応札されたと思われるが、この行為がスクイーズを助長した面もあり、そういう特殊事情も考慮して欲しい。
・先物市場については、制度的な問題もあると思われるが、どちらかというとマーケット参加者が偏在している点が原因と思われ、それに対し現物債マーケットやその他のマーケットとの裁定がかかるような状況を作っていたレラティブバリューのプレイヤーが退出を余儀なくされている状況が割高さを助長している。
また現物市場についても、先物を使わず現物債だけで売買できるのかということでは、流動性が落ちていることが問題となる。現物債は先物に比べれば流動性が低く、その分、ボラティリティが上昇するということであり、結局、投資家にとってもリスクテイク能力の低下を招くのではないか。もう一方ではサブプライム問題が起こってから業者やレバレッジ系ファンドも資本のコストが高くなる中で、リーマンの破綻が拍車をかけた形となっている。ヘアカット等も含めB/Sを落とすニーズはマーケットには存在しており、B/Sを一定の水準に維持しながら更に流動性をキープするために、お金や物のファンディングが必要なのだが、それが一時的に停止を余儀なくされたことや決算時期ということが要因も加わり、一段と悪循環を起こしている。
【レポ市場の機能向上について】
・リーマンの破綻に関する問題は、新たな取引が将来に向かって発生しない訳であり、基本的に時間が解決していくと思う。ただ、市場では、フェイル等の決済の問題が発生していることもあり、これを契機にフェイル慣行をどう整理するのかということが重要である。これは投資家と証券業者がどう考えるかの問題であるが、今回の件でフェイルに対してナーバスになってしまうことが心配である。これまで日本ではフェイルに対して否定的である一方、アメリカでは、今回の事態で桁違いの規模でフェイルが発生しているが、大きな問題となっていないのは、フェイルに対する慣れ方、考え方の違いが大きいのではないか。
・レポに関しては、リーマン破綻の影響で、先週などはかなり荒れ、フェイルも増えたが、今週に入ってからは安定してきており、今後は時間が経てば更に安定するのではないか。フェイル慣行など、今後投資家の方々の考え方など議論していく余地はあるとは思うが、平常時にはストレスもなく決済は行われている。
・レポの問題については、業者サイドだけでは解決できない部分が多々ある。原則リオープンの考え方は基本的には賛成だが、どちらかと言うとレポマーケットの流動性、物のファンディングをいかに改善させるかという点の方が重要である。過去、セトルまで期間がかかっていたが、現状、取引や新発債の発行は主にT+3まで取引の短縮化されており、更にT+1まで短縮することや、レポマーケットもT+3、T+2からT+1やT+0で対応できるよう投資家に協力を求め、改善できる部分があるのではないかと考えている。
また、決済機関であるJGBCCへの参加にはコストがかかり、必ずしもすぐに強制的に全員が参加する訳にはいかないが、大半の投資家が参加していないことも今回の問題を間接的に助長した部分もあると思われ、現物債マーケットの流動性を維持又は向上するためには、投資家の協力を仰ぐ必要があるのではないか。
【流動性の向上について】
(原則リオープン関係)
・流動性の向上に関しては、前回のPD会合でも否定的な意見が多かったが、マーケットメーカーとして以前から主張している原則リオープンが、今後の改善策の一つとして考えられるのではないか。銘柄数が多いためにロング・ショートが多数存在し、今回のレポの問題が深くなってしまったというところがあるので、原則リオープンについて長所短所はあるが、検討してみてはどうか。
・原則リオープンを導入して、先物に頼らずに現物の5年や10年でヘッジができるように、かつてあった指標銘柄を再び導入してはどうか。
・チーペストゾーンが締まることやSCレポで一部のカレント銘柄が締まってしまうという構造的な問題は、JGBマーケットでは発行銘柄数は多いものの、1銘柄当たりの発行額が少ないということが流動性の低下に繋がり、それが構造的な問題の根本にあるということに行き着くと思う。以前から本会合では、原則リオープンについてずっと議論されてきており、確かに投資家の立場に立てば色々なクーポンがあったほうが良いというのは納得できるが、今回のようにリーマン破綻によって、流動性が失われることでマーケット機能全体に影響してしまうことのほうが、より影響が大きいということに皆気づいたのではないか。リーマン破綻をきっかけにしてもう一度、原則リオープンについて議論すべきタイミングではないかと考えている。
・リーマンのポジション解消に伴う流動性の縮小の問題というのは、シリアスな問題ではあるが、その問題と原則リオープンの問題がロジカルに繋がるとは思ってはいない。米国発の金融危機よってマーケット全体のリスクテイク能力が低下しているためであり、原則リオープンの実施がマーケットの流動性の向上に寄与するとは思えない。原則リオープンと今回のリーマン破綻によるポジションのアンワインドに関わる問題というのは、区別して考えるべきだと思う。
4月以来ボラティリティが30%程度上昇しているが、バーゼルⅡのリスク規制に達しているところでは30%のリスクキャピタルが自動的に消失されていることとなる。現在のマーケットでリスクテイクをしながらポジションを構築していかなければならないが、マーケット全体のリスクテイク能力が低下する中では、オペレーションが非常にやりにくい状態となっていることも、原則リオープンがマーケットの流動性向上に繋がるとは思えない一つの理由である。
(流動性供給入札関係)
・ある特定銘柄がレポ市場で▲20%でしばらくトレードされている状況も散見されており、こういった状況であれば、特別流動性供給入札を発動しても良いのではないかと考えている。
・ヘッジファンドなどが対先物で持っていたポジションをアンワインドする動きがかなり起きた影響で先物が割高になり、それが結局そのまま続いていると考えている。しかしながら、これを背景としてチーペスト銘柄の流動性供給入札をやるということには、当社はあまり積極的に賛成できない。現在のチーペスト銘柄は10年の274、5、6回あたりだと思うが、チーペスト銘柄から外れた時に、次のチーペスト銘柄がまた締まってしまうなど、次の銘柄も供給しなければ、結局イールドカーブを歪める可能性もあり、対応は慎重に考えた方が良い。
・ヘッジ機能の喪失に関して、例えば、ある銘柄でショートが深いと、この銘柄が今後またスペシャルになったらどうしようという恐怖感が常に先立つ。また、例えば10年債を1,000億買いたいという大きなロットの話があると、その銘柄の業者間の板がどんどん強くなるなど、手に取るように分かる。今が混乱しているだけということは確かにあるが、流動性の喪失は非常に深刻であると受け止めている。
10月以降、調達コストは多少落ち着くかもしれないが、現物の流動性が低下している中で、ヘッジ機能を喪失したまま10月に入った場合、どの程度リスクを取れるかというと、そんなリスクは取れないと言わざるを得ない。例えば、超長期のカレント近辺や10年のカレント近辺など、今安心してショートが振れない銘柄を仮に顧客が買いたいと言っても、今目の前にあるレートから5bpや10bp強ければ出す、という形になってしまう。こうしたことが続けば、オファー・ビッドがどんどん広がり、参加者が減っていく。そして結果的にマーケットに厚みがなくなるということを懸念している。大手投資家を中心に当面はこなせると思うが、いずれは発行にも影響すると考えている。
期末でショートが回らず困っている業者も多く、時間もないタイミングではあるが、折角創設した制度でもあり、当面の対応としては、特別流動性供給入札を行ってほしい。銘柄に関してはポジションによって選好があると思うので、投資家を含め各々の応札額も合わせアンケートを取り、複数銘柄を決定して行う形が良いのではないか。
・リスクリダクションの流れが未だ続いている中で、構造的な問題としては、先物の6月限や9月限のチーペストゾーンに比べ、12月限のチーペストゾーンがショート銘柄になっていることが挙げられる。そもそも12月限のチーペストゾーンの銘柄は市中での流通量が薄いといったこともあり、この議論をするときには切り離すことは困難なことではあるかもしれないが、構造的な問題と現状で起きている特殊事情を緩和する応急処置的な問題とを切り離して考えた方が良いと思う。また、下期にずっと継続していく必要はないとは考えているが、当面を凌ぐという意味でもマーケットの流動性を向上させるため、チーペストゾーンを含めた形で流動性供給入札を積極的に実施したほうが良い。
・イールドカーブの先物ゾーンの歪みに関しては、チーペストの流動性の枯渇によって7年ゾーンの流動性が低下していることが原因と考えている。流動性供給入札等でこのゾーンに厚く配分することは少しは助けになると思うが、根本的な解決になるかというと疑問である。先物市場には現受け現渡しを全く前提とせずに売買を行っている参加者がいるが、その参加者をある意味排除しない限りは根本的な問題の解決にはならないと思う。
・先物と現物があるだけで自動的にコンバージョンするものではなく、ディーラーがいるからこそ、コンバージョンすることができると考える。3月のエンデバーショック以来、レラティブバリュー系が縮小してからは、そういったトレード自体が完全に退出して機能していないのだと思う。また、足元で先物が急激に上下するのは、CTAのシステムトレードによることが大きく影響しているのだろう。レラティブファンドは、まだ縮小を続けており、縮小し続ける限りは、先物のヘッジ機能が回復するというのは非常に難しいと思う。対策がないのかと言われれば、それは時間が解決する問題ではないか。チーペストをいくら供給しても、先物マーケット問題の解決にはならないと考えている。
・現状の流動性については、発行コスト等を勘案するとネガティブなインパクトが大きい状況であり、その状況が必ずしもすぐ改善するものではない。
マーケットメーカーを含めマーケット全体が当面デレバレッジの方向に向かう中で、業者がB/Sを落としていくか、又は低水準を維持するためとの観点からは、一般の流動性供給入札を増やすことによって、業者を中心とした世の中のB/Sの入り繰りをある程度積極的に解消していくということも一案と思われる。
・入札でヘッジツールが不足している中、目先ではリーマン1社の退出によって直接的に応札額が減っているので、非常にリスクが高くなっている。それを回復するという意味でも、一時的にでも流動性供給入札によってチーペストなりスクイーズしている所を供給することも一案ではないか。
・流動性供給入札について、リーマン破綻や信用収縮が発生している状況で、かなり締まっている銘柄が頻発している状況を考えると、予想以上のことが起こっていて、「何が正しいか」、「何ができるか」、「結果どうなるか」といったことは非常に判断が難しい。短期的な要因に対応すべきこと、構造的な要因に対応すべきことを分けて考える必要があるが、当局として何か対応した方が良いと考えている。
現在の流動性供給入札では、テクニカルな要因等もあってゾーンを2つに分けて対応しているが、例えば毎回全ゾーンに広げる一方で、対象銘柄が増えてしまうので事前にアンケートを取って銘柄をある程度絞った上で、実施してはどうか。
また、レラティブバリューの参加者は、このところ連戦連敗になっており、流動性の減少という意味では非常に大きな要因になっている。足元では物価連動債のBEIが急落しているが、流動性供給入札をこの機会にある一定期間、増額し、銘柄を広げるという対応を図り、物価連動債の減額とセットで考えてはどうか。
・前回、特別流動性供給入札が問題になった19年6月に発行した第286回債はカレント銘柄だったが、現状で一番レポが締まっている銘柄も流動供給入札の対象銘柄から外れる第291回債であり、やはりカレントゾーンへの流動性供給入札の拡大も考えていかなければいけないと思う。
・流動性供給入札の実施の趣旨は、イールドカーブの構造的な歪みを是正することが目的ではないかと思う。今のカレントゾーンのイールドカーブが果たして歪んでいるかというと、そのような認識はない。今のイールドカーブを前提に我々は投資する立場にあり、この利回りを承知して保有している訳で、たまたま短期間レポ市場が締まったために、流動性供給や特別流動性供給によって急に需給関係が変わって、デジタルに均衡点であるイールドが変わってしまうのは、国債を資産として保有する投資家からすると非常に問題があると認識している。
・流動性供給入札など発行当局としては流動性補完策のオプションは多い方が良い。ただし、今回の局面は、複合要因も加わっており、市場の構造的な欠陥があぶり出されているようにも見える。構造的な部分、すなわちインフラ整備も合わせて検討・見直すのもいい機会ではないかと思う。非常に難しいところだが、決済機構の強化及びフェイル慣行の定着が、解決策につながるのではないか。今起きている現象として、「フェイルの頻発」、「レポ市場の収縮」、「7年を中心としたイールドカーブの歪み」といった3点が挙げられるが、決済機構が強く、フェイル慣行の定着ということが見られれば、フェイルの頻発を完全に無くすことはできなくても減らすことができるであろうし、レポ市場の収縮も軽減することができるのではないかと思う。先物の歪みも、流動性選好から起きている部分も否定できないので、現物の流動性が十分に確保されていれば、ここまで歪むこともないと考えている。
また、インフラ整備を伴っていれば、例えば、流動性供給入札やリオープンの効果が最大限に発揮できるのではないか。リオープンして、玉が増えることによって、個々のポジションのネッティングもさることながら、参加者間のポジションのネッティングができるので、決済機構の強化を行うことで流動性が更に向上すると思う。リスクアペタイトが減少している中で、完全にレラティブバリュー投資家を呼び戻すことはできないかもしれないが、レポ市場の収縮によって、レラティブバリュー投資家の減少以上にポジション構築が難しくなっている部分は改善できると思う。
(3)物価連動債の現状などについて〔参考配布:資料3〕
4理財局から、物価連動債の現状などについて以下の通り説明を行った。
物価連動債については、資料3-1にあるとおり、2003年度に発行を開始し、現在約10兆円の残高となっている。本年度は5,000億円×6回の発行を予定しており、既に4・6・8月の発行を終えたところ。
資料3-2にあるように、本年7月頃から10年固定利付債と物価連動債の利回りの差で示されるブレーク・イーブン・インフレ率が再び下降し始め、今月上旬にはゼロ近傍を推移した後、リーマン・ブラザーズの破綻を境に一気に▲30bpレベルまで下降している。勿論、こうした動きは、一部にはWTI先物の価格推移とも関係すると推察され、資料3-3にもあるように、市況の悪化は主要国の物価連動債に共通していえることでもある。
来月8日には物価連動債5,000億円の入札が予定されているが、マーケットにおける物価連動債の状況や中長期的な育成策についてご意見を頂きたい。
4出席者から出された意見等の概要は以下の通り。
・外国人投資家のトレードが減少する中で、当社としては15年変動債や物価連動債の値動きを非常に懸念している。まずは買入消却を増額し、その分、利付国債の買入消却を減額するなどで対応すれば良いのではないか。また、新規発行額を減額するならば、流動性供給入札の増額で対応してはどうか。
・変動利付債についてみられた現象と同じく、レラティブバリュー系がかなり市場から撤退したことにより、市況の悪化を招いている。主要な買い手だった海外勢の一部が最近では投げ売りしている一方、国内投資家の間では引き続き投資が広がらなかったことにより、スパイラル的な市況の悪化に繋がっている。
対応としては、下期発行額の減額という形で一旦は凌いだ方が良いのではないかと考えている。長期的には商品多様化の観点から物価連動債市場を育成したいとは思うが、当面の対策は必要である。減額の方法としては、10月は発行額を1,000億円減額し、今後の状況次第ではあるものの、信用収縮やバランスシート縮小の動きが続く可能性が高いとみられる12月には発行を見送り、計6,000億円の減額とする。減額分については、流動性供給入札を増額して補うのが妥当ではないか。
・足元、供給に比べて需要が極端に少ない状況になっているため、まずは短期的な対応として、供給量の見直し、すなわち入札の見送りが望ましい。また、買入消却については、下期の固定利付債の買入予定額4,000億円を、全て物価連動債と変動利付債に振り替えるべきと考えている。減額分の代替発行については、流動性供給入札の増額でも良いし、今であれば他の利付国債の発行増額でも対応できるのではないか。
長期的な視点では、これまで海外ファンドの保有が多かったが、今後は国内投資家の保有に重点を置く必要がある。
物価連動債の保有残高を増やす上で最も障害となるのが会計制度である。連動係数によって物価連動債の額面が変わるため、決算期毎に償却原価法による損益が発生する。BEIの-0.3%という水準は10年間保有すれば十分に妙味があると思うが、単年度決算を行う以上、額面の変化により大きくアモチ損が出てしまうと保有利回りがマイナスになりかねない債券となり、機関投資家は保有しづらい。償却原価のルールを見直す、もしくは商品性を見直すならば、償却原価によって毎期の受取利息が大きく変化しない方向での変更を検討していただきたい。機関投資家の多額の保有を実現するには、そうした対応が必要と認識している。
・次回の入札は見送り、かつ、買入消却の増額など、足元の需給環境の改善のため、発行当局として積極的な姿勢を示すことが大切である。
海外投資家の中には、発行当局が発行市場を積極的にコントロールすべきとの考え方が定着している。先週、英国において、足元の市況を踏まえて物価連動債の入札が減額されたが、海外の発行当局は比較的短時間で市場のコンセンサスを取りつつ、能動的に発行市場をコントロールしている。従って、海外投資家の中では、現在の日本の物価連動債の市況を踏まえると、コストを覚悟で発行すべきではないとの意見が多い。代替の発行としては、流動性供給入札を積極的に増額すること良いのではないか。それにより、市場への流動性の供与というメリットも期待できる。
長期的な視点での市場振興策は難しいが、海外と異なり、国内の年金基金に物価連動債の保有が広がらないなど、投資家層の拡大が発行量の拡大に追い付いていないことに問題があるのは確かである。元本保証が付いていないことが満期保有債券に比べて会計上不利であるとの指摘があるならば、日本でも年金基金が積極的に買えるような会計制度や商品性の改善が必要なのではないか。
・物価連動債の利回りやBEIは、国際的には当該国の経済のファンダメンタルズを見る上での指標の一つと位置付けられている。足元のようなBEIの水準では、海外には日本はデフレの国と映ってしまいかねない。そうした点では、単なる物価連動債の需給を越えた問題でもあり、次回の入札を見送るなど市況の正常化に向けた対応をとるべきである。
・物価連動債の参加者は、海外のレラティブバリュー、レバレッジ系の参加者が占める保有比率も大きいことから、10月の入札はスキップすることも検討し、その振替先として流動性供給入札を増額することも必要ではないか。
・物価連動債の価格下落は、海外の商品安などの影響もあるが、最大の要因は需給のバランスが崩れていることであろう。従って、短期的には供給を減らすという対策はあり得るが、一方で、BEIの動きに応じて発行額に振れが生じることになれば、市場参加者としては対応が難しくなることから、今後十分議論していく必要がある。
もっとも、BEIがマイナス30~40bpという異常な水準まで低下した状況では、対策は必要である。具体的には本年度下期には固定利付債で4,000億の買入消却の予定があるが、全額を物価連動債に充当するのが良いと考えている。
長期的には、投資家層の拡大というものを地道に続けていくべきだと考えている。買入消却の増額などの当面の対応も、長期的な対策とセットにしていかなければ、結局効果が長続きしない。
・需給バランスが崩れていることに表れているとおり、投資家が買えない商品を発行し続けることは望ましくない。現状のBEIは異常であるが、これには必ず原因や背景があるので、多少時間をかけてもそれを考えていく必要がある。
目先の対応として、出席者の多数意見であれば一時的な発行見送りもあり得ようが、それ自体が物価連動債の発行停止という印象を市場参加者に与える懸念もあるので、減額発行に止めるのが良いと考えている。例えば、一回当たり3,000億円程度の発行としてはどうか。当初予定比での減額分については、前倒債で調整すれば良いだろう。
・足元のBEIの水準は、原油価格の下落等の要因を越えている異常な動きであるため、この状況においては、来月予定されている発行は見送るべき。加えて、物価連動債の買入消却は、下期については一回当たりの金額が小さくなっても毎月実施して欲しい。来月に減額して発行する場合には、買入消却の増額も合わせて実施すべきと考える。
・国内投資家層の拡大に繋がる対応として、国内債券のベンチマークに対する物価連動債の組み入れへの期待感があるが、過去からの連続性などの問題になると思われるので、非常に難しいのではないか。従来のベンチマークと物価連動債で構成されるベンチマークとの加重平均を用いた対応などを国内投資家に定着させることも一案ではないか。
・物価連動債について、年金をターゲットにするのが時期尚早だったともいえる。英国で年金基金が物価連動債に投資をする理由は、インフレリンクの負債を有するためである。一方、我が国では、年金基金の負債はインフレリンクになっていないので、最近ではLDIが盛んになってはいるが、所詮スワップを活用したり、超長期債を購入したりするという程度だろう。従って年金に対するIRも効果が上がるか疑問である。
(4)理財局からの説明事項〔参考配布:資料4〕
4理財局から、以下の事項について説明を行った。
○ 海外IRの実施状況
9月に実施したアジア・大洋州IRの結果について御報告申し上げる。
9月1日(月)から9月5日(金)にかけて、アジア・大洋州IRとしてシドニー、シンガポール、香港の3都市を訪問し、個別に投資家に説明を行った。
シドニー及び香港においては3回目、シンガポールにおいては4回目であるが、今回のIRではセミナーを行わず、個別に多くの投資家と直接対話することで、投資家のニーズのよりきめ細かい把握とそれへの対応が可能となり、日本国債の更なる理解にとって有意義なものであったと思っている。
この度のアジア・大洋州IRにおいては、国債市場特別参加者のうち、野村證券株式会社、みずほ証券株式会社及びクレディ・スイス証券株式会社の協力を得た。協力頂いた3社にこの場を借りて御礼申し上げる。
連絡・問合せ先:
財務省 理財局 国債業務課 太田原・橋本
電話 代表 03(3581)4111 内線 5701
出典:財務省