PD Meeting #63
| Date | 2015-11-26 |
|---|---|
| Venue | 財務省 第3特別会議室 |
| Agenda | 1. 平成28年度国債発行計画について〔参考配布:資料〕 (1)年限別発行額 (2)流動性供給入札の対象拡大について 2. 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて〔参考配布:参考資料〕 |
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Materials
| 資料PDF |
| 参考資料PDF |
Minutes
(1)年限別発行額
○平成28年度国債発行計画について、理財局から以下のように説明を行った。
・新規財源債(建設・特例国債)については、現時点で確たることは申し上げられないが、資料1のP1にあるとおり平成27年度の発行規模は36.9兆円である。平成28年度は今後の予算編成の動向次第となるが、内閣府中長期試算では、▲1.2兆円減少の35.7兆円と推計している。復興債については、今後の予算編成過程で決定される予定であり、財投債については、財投計画全体の規模を踏まえて今後決定することとなっている。借換債は、平成28年度概算要求ベース(112.8兆円)では、平成27年度計画額(116.3兆円)より約▲3.5兆円低い水準である。
・個人向け販売については、足元では「個人向け国債」は11月時点で約1.4兆円、計画額2.1兆円と概ね計画に沿って消化している。一方、「新窓販」は11月時点で約800億円、計画額2,000億円と売上が伸び悩んでいるところである。こうした販売動向を踏まえつつ、発行予定額を決定することとしたい。
・その上で、本会合を含め市場関係者の意見も踏まえつつ、予算編成過程と並行してカレンダーベース市中発行額の年限構成や規模を決定する。また、日銀乗換は、最終的には日本銀行の決定によるものであるが、今後当局として市場環境も踏まえ、要請内容を検討したい。
・平成27年度はP2のとおり40年債、30年債を増額(計+2.0兆円)する一方、5年債、2年債及びT-Bill・1年物を計▲6.1兆円減額した。
・なお、発行残高ベースで見た平均償還年限は、P3のとおり平成27年度末で約8年5ヵ月となる見込みである。P4にあるグラフにて主要諸外国と比較すると、英国(16.2年)より短いものの、米(5.7年)・独(6.6年)・仏(7.0年)に比べ長期となっている。
・平成28年度発行計画においては、今後の国債発行をめぐる環境や主要な投資家の需要動向を見極めつつ、発行国債の年限構成を検討したい。
・まず、国債発行をめぐる環境を見ると、P5にある内閣府の中長期試算を用いた借換債の将来推計によれば、借換債発行額は平成29年度をボトムに将来的に上昇を続ける見込みである。また資料P6からP7は、足元の国債金利に基づくインプライド・フォワード金利や内閣府中長期試算における金利前提を示している。
・一方、国債管理政策上、市場にとって予見可能な形で国債を発行することが中長期的な調達コストの抑制の観点から重要であり、そのためには、投資家の今後の需要動向を把握し年限構成を検討することが重要と考えている。参考として、資料P8からP10は、足元における国債残高の保有者別内訳、超長期ゾーンの消化状況と生命保険会社の国債保有や運用原資、保険契約の動向、銀行の預貸ギャップの動向を示している。
・以上を踏まえ、国債発行計画を今後考えられる様々な状況に的確に対応できるようなものとするべく、本日の会合では幅広く皆様のご意見を承りたい。
○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。
・カレンダーベースの市中発行額が減額となることについて、強く反対はしない。ただし、10年債については将来的に先物のチーペスト銘柄となり得るため、流動性を確保する必要があることから現状の発行額を維持することが望ましい。
40年債については、現在は年5回の発行となっており、10月の入札の後は次回の入札まで間隔が空いてしまうことから、需給に偏りが生じ、ボラティリティの拡大にもつながっている。入札の間隔を平準化する観点から年6回の発行とし、4,000億円×6回とすることが良いと考える。
減額の余地があるのは、2年債、5年債及び20年債と考えている。
・ 10年超の年限については、現状維持を希望する。特に10年債は指標金利となる年限であることから現状の発行額を維持することが市場環境として望ましい。
2年債及び5年債は減額が可能。その場合、両年限は同じ減額幅とすることが市場にとって望ましいだろう。ただし、中期ゾーンはマイナス金利となっており、投資家ニーズに乏しい状況であるため、ボラティリティが拡大していることには留意が必要であり、市場の環境をみながら対応してほしい。
・ 海外投資家等は日本国債の格付けを気にしていることを踏まえると、発行総額が減額する方向であることは好ましい。
ただし、40年債については、年5回の発行となっていることによって需給に偏りが生じているため、これを平準化する観点から4,000億円×6回とすることが望ましい。
2年債及び5年債については、投資家ニーズに乏しいことから減額が可能と考える。
・発行総額を減額する方向性には賛成する。2年債及び5年債はそれぞれ月1,000億円程度の減額は可能であるが、当該ゾーンは特に、日銀買入オペを前提とした極めて低い金利水準となっているため、大幅な減額を行うと予期せぬ金利上昇を招く可能性がある。更に減額が必要であるなら、20年債又は30年債を減額するべき。
・発行総額を減額する方向性には賛成であるが、超長期ゾーンに関しては、現状の発行額を維持することを希望する。
40年債については、大規模に取り扱ってはいないが、あえて言えば発行額に占める日銀買入オペの買入額の比率等を考えると現在の発行額以上のニーズはないかもしれない。
20年債については、流動性が維持されているゾーンであることから現状維持が望ましい。
減額するのであれば5年債が望ましい。付利金利を下回る水準である5年債には投資ニーズが全くない一方で、T-Bill及び2年債には担保ニーズが相応にある。
・全体として、国債の平均償還年限を早急に短期化すべきと考える。
政府が国債発行により調達した資金を補助金等として民間に支出すると、最終的には、支出先の企業等の預貯金として積み上がることとなる。デュレーションの短いこの預貯金が、再び預金取扱金融機関の国債買い入れ原資となっているため、国債発行残高が増加するほど、運用サイドの負債のデュレーションは短期化することとなる。近年、供給サイドではこれとは逆に、急激に国債の平均償還年限の長期化を進めてきたことから、運用サイドと発行サイドのデュレーションのミスマッチが拡大し続けている。
負債に連動しないリスクを増やし、デュレーションのミスマッチを放置すれば、市場の抱える金利リスクが高まり、どこかで金利の急騰につながると考えている。実際に金利が急騰した局面で、債務の平均償還年限を急激に短期化することは難しいことを考えれば、今から平均償還年限の短期化を進めておくことが適当。
2年債、5年債について、付利を下回る金利水準が常態化しているのは、発行額が少ないことが原因であり、本来であれば両年限は増額するべきところであるが、カレンダーベース市中発行額を減額する必要があるのであれば、せめて現状の発行額は維持することが望ましい。
他方、30年債については月2,000億円、20年債については月1,000億円、10年債については月1,000億円ずつ減額するべき。
・10年債は指標金利となる年限であるため、現状の発行額を維持することが望ましい。
40年債については、今年度は年5回の変則的な発行となっているが、入札の間隔は平準化してほしい。年6回では全体の発行額が増額とならざるを得ないため、カレンダーベース市中発行額の減額が見込まれる中では、入札回数は年4回とする一方で、1回の入札当たりの発行額を5,000億円に増額し、発行額を維持することが望ましい。
市中発行額の減額をする上では市場への影響を踏まえると、まずは2年債及び5年債の減額が望ましいと考える。
仮に月5,000億円程度の減額が必要だとすれば、さらに20年債及び30年債についても減額が可能。最近では投資家が超長期ゾーンの購入額を減少させており、主要な買い手は日本銀行となっている。将来の金融政策の変更も見据えると、超長期ゾーンも減額する余地があると考えている。
・カレンダーベース市中発行額が減額となる方向について異論はない。
その場合でも、40年債及び30年債については、流動性を確保する観点から、現状の発行額を維持することを希望する。あわせて、40年債については、1回の入札当たりの発行額を5,000億円に増額し、入札回数を年4回として入札の間隔を平準化してはどうか。
2年債から20年債までの年限は、それぞれ月1,000~2,000億円程度の減額は可能と考えている。ただし、10年債については将来的に先物の受渡適格銘柄となることには留意が必要。
2年債については、発行額の減額によって入札時におけるマイナス金利が常態化するリスクにも留意すべきである。
・超長期ゾーンについては、現状の発行額を維持することでよいと考える。40年債については、強く拘るものではないが、円滑な発行を図るため入札の間隔を平準化し、年6回の発行とすることも考えられる。
中短期ゾーンは減額が可能と考える。もっとも、足元の同ゾーンがマイナス金利となっている状況を考えると、大幅な減額は避けるべきではないか。
・財政規律の観点で、発行総額の減額は、市場にはよいメッセージとして受け止められるだろう。 超長期ゾーンは、積極的に減額する必要はないと考えているが、長期的な視点からは、20年債については、金融政策の方向性次第ではボラティリティが高まる可能性があることから減額は可能と考えている。ただし、減額幅は月1,000億円程度にとどめることが望ましい。30年債、40年債は現状の発行額を維持することを希望する。
2年債及び5年債については、足元の金利水準での投資家ニーズは限定的であり減額可能であるが、大幅な減額は国債市場の流動性の更なる低下を招きかねない。残存5年以下のゾーンが流動性供給入札の対象に追加されれば、中期ゾーンの流動性が維持されることが期待できるため、減額の余地が高まると考えている。
・国債発行総額のみならず市中発行額の減額について、財政規律の観点から望ましいとしているともとれる意見があったが、日銀買入による市場流動性への影響について議論してきた中、このような意見には違和感を覚える。発行総額は減額しつつも、前倒債の増額により市中発行額は来年度も維持し、金融政策の変更があれば年度途中に発行計画を変更することで対応するといった考えは当局にはあるのか。(これに対し、理財局から、「発行総額は外生的な要因で決まる中で、市中発行額については、急激な減額は市場における円滑な流通を阻害するものとして、これまでも維持するよう努めてきたところ。市中発行額をなるべく維持することが市場の要望であることを認識したうえで、市中発行額をどうするか部内で議論している。」旨回答した。)
・増減額の議論に関しては、価格の急騰・急落を許容しさえすれば、市場はどのような規模であっても消化すること自体は難なくできると思われるが、当局として、どの程度の価格変動であれば許容することができるのか。たとえば、足元では2年債や5年債の価格を見れば理論値対比で考えても価格形成機能が失われていると考えられるが、そのような状況は許容できるのか、その他にも何か基準などあれば教えて頂きたい。(これに対し、理財局から、「増減額にあたっては、市場になるべくインパクトを与えない形で実施することが重要であると考えている。また、確かに価格の変動を考慮しなければどのような発行も可能であろうが、一方で調達コストの問題も考える必要がある。したがって、市場にインパクトをできるだけ与えない形で、あるいは当局から見た調達コストの急騰を招かない形で、発行していくことが重要であると考えている。」旨回答した。)
(2)流動性供給入札の対象拡大について
○流動性供給入札の対象拡大について、資料1のP11に沿って理財局から以下のように説明を行った。
・流動性供給入札については、前回の本会合において、流通市場の機能を向上させるという本入札の趣旨を踏まえ、現在対象とされていない残存5年以下の銘柄を追加すべきかどうかにつき、引き続き検討することとなっていた。
・これを受け、事前に皆様からご意見を伺ったところ、残存5年以下についても、既に流動性供給入札の対象となっているゾーンと同様、需給がタイトになっており、投資家の需要に対応できない銘柄が存在するため、対象ゾーンの拡大が必要とする意見と、既存の対象ゾーンの入札回数や発行額への影響を考えれば、あえて対象ゾーンの拡大を行う必要はないとする意見の双方が聞かれた。
・対象拡大を検討するに当たっては、その必要性・妥当性の有無が問題になるとともに、実際に導入する場合には、残存何年超から対象とすべきか、発行総額との関係で制約はあるが、どの程度の規模で実施すべきか、新たなゾーンを設け3ゾーンで実施するのか、2ゾーンのまま対象を拡大するのか、また資料1の注に記載されているとおり、利付債の入札日に流動性供給入札を実施することや、異なるゾーンの流動性供給入札を同一日に実施することは困難であるが、それを前提にして、具体的な入札スケジュールをどうするか、といった点が論点となると考えられる。
○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。
・残存5年以下のゾーンは、需給がタイトで投資家のニーズに対応できていない状況であるため、ぜひ対象に追加してほしいと考えている。同ゾーンの実施額としては、年間1.2兆円程度から始めるのがよい。スケジュールについては、残存5-15.5年ゾーンを毎月実施し、残存1-5年及び残存15.5-39年ゾーンを隔月で実施することを希望する。
・残存5年以下のゾーンは、依然として流動性が低く、店頭の売買においてもワイドなアスク・ビッドを提示しなければならない状況であるため、国債市場の流動性の維持・向上の観点から、同ゾーンを対象に追加とすることが適当である。対象年限については、残存1年以上とすることを希望する。現在、残存3年より少し手前の銘柄の需給がタイトな状況であり、当該銘柄は来年9月頃には残存2年未満となるところ、対象年限の下限が残存2年超となればカバーする機会が限られてしまう。実施額は、市場で不足していると思われる額を考えると年間1.2兆円程度が妥当ではないか。ゾーンの切り分け及びスケジュールについては、残存5-15.5年ゾーンを毎月実施し、残存1-5年及び残存15.5-39年ゾーンを隔月で実施することを希望する。
・残存5年以下のゾーンに対象を拡大する必要はない。投資家の強いニーズがあれば考慮する必要があるが、現状、当社にはそこまで強いニーズが見られていない。平成28年度の発行計画において2年債及び5年債を減額する場合に、流動性供給入札に残存5年以下のゾーンを追加して流動性低下を補完するという考え方もあるかもしれないが、その点についても、最も投資家のニーズが強いカレントを減額する一方で、それほどニーズの強くない既発債を追加供給するということになるため、違和感がある。2年債のマイナス金利の常態化を招くことにもなりかねず、かえって需給の悪化につながるおそれがある。
・残存5年以下のゾーンに対象を拡大する必要はない。仮に対象を拡大するために、残存15.5-39年のゾーンが減額されるのであれば、結果的に平均償還年限が短期化する点は評価できるが、単に残存15.5-39年ゾーンを減額すればよいだけの話である。現在、残存5年以下のゾーンの流動性が低い要因は、単に2年債と5年債の発行額が少ないためであり、流動性供給入札による対応だけでは解決策にならない。
・マーケットの流動性を維持する上で、残存5年以下のゾーンを対象に追加する効果は高いと考える。金利水準は市場の需給で決まるが、本年1月や2月のような局面では、市場全体の流動性が低下してボラティリティが上昇することがある。
日銀買入が今後も継続する中で、既発債をカバーできなくなってしまうことを懸念してオファーが出しにくくなり、価格が非連続になってしまっている。実施額が大きい必要はなく、年間1.2兆円程度の追加発行があれば、ショートカバーの心配をせずにオファーが出せるようになることから、金利が上下する局面における価格の非連続性もなくなり、超長期ゾーンも含めた市場全体の流動性も高まることが期待できる。
対象年限については、強い意見はないものの、ショートになっている銘柄の残存期間が短くなってきているため、残存1年以上を希望する。スケジュールについては、残存5-15.5年ゾーンを毎月実施し、残存1-5年及び残存15.5年ゾーンを隔月で実施することを希望する。
残存15.5-39年ゾーンを隔月で実施する場合、同ゾーンの発行総額が現在と比べて大きく減ることがないよう1回当たりの発行額は増額し、4,000億円×6回としてほしい。
・残存5年以下のゾーンを対象に追加することに賛成である。実施額は1回の入札当たり1,000~2,000億円で良い。スケジュールについては、残存5-15.5年のゾーンを毎月実施し、残存1-5年及び残存15.5-39年ゾーンを隔月で実施すればよいと考えている。
・バランス・シート制約の厳しい中で売買を行っており、流動性供給入札は非常に重要である。残存5年以下のゾーンを対象に追加し、3ゾーンに分かれることに反対する理由はない。ただし、残存5-15.5年ゾーンに関しては、購入したいにもかかわらず、毎回購入できない銘柄が存在しているため、引き続き毎月実施してほしい。
2. 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて〔参考配布:参考資料〕
・現在は、12月にFRBによる利上げ、ECBによる追加緩和といった海外のイベントが予想されていることもあって静かだが、基本的な流れはこれまでと変わっていない。1年前の本会合で、「利回りの自然落下」という言葉を使ったが、これは、日本銀行が日本国債を大量に購入することで需給がひっ迫しているものの、利回り水準が低いためにゆっくりとしか下がらない、という意味であり、これが現在もメイン・トレンドである。
これからの議論であるが、平成28年度のカレンダーベース市中発行額が減少するのであれば、償還分を考えれば日本銀行の国債購入量がグロスベースで増えることは必至であることから、需給ひっ迫は一段と厳しいものとなる。10年債の利回りは現在の史上最低水準である0.195%を更新し、付利の0.10%が目途になってくるのではないかと思う。
人口動態を考えると、我が国ほどではないものの、米国や欧州も成長率は下がり、ディスインフレが長期化することから、海外の長期金利も持続的に上昇するとは考えづらく、海外金利上昇に伴い円金利が持続的に上昇するシナリオも排除されてくる。
需給ひっ迫の裏返しは流動性の低下であり、来年度も注意しなければならない事項の一つである。例えば、本年1月にも経験したように、10年債等の史上最低水準が更新されるような状況になれば誰が売っても利益が出るため売りインセンティブとなるが、流動性の低下した市場においては、それを契機に急激な金利上昇につながりやすい。
また、日本銀行に関して、様々な形で出口論が出やすい状況にあり、それが一時的なリスクプレミアムの拡大をもたらす可能性がある。持続的な長期金利の上昇にはつながらないとは思うが、来年度のテーマとして考えておくべき。
また、ディスインフレが強く意識される中、FRBの利上げが1、2回にとどまるようであれば、連続利上げを前提に進んできたドル高・円安が修正される等、様々なマーケット変動要因が生じるため警戒が必要。
・平成28年度の日本国債市場に関して、当局によるカレンダーベース市中発行額が減額方向の中で、日銀買入が続いている限りは、金利が低位安定するだろう。
短期ゾーンがここまで低い金利になっている要因は、本邦勢のドルのファンディングコストが高いことや、海外投資家からみたドルベースに変換した日本国債のリターンが非常に高くなっていることが背景になっているものと思う。
この要因を大まかに分けると2つあり、1つは金融政策の方向性の違いである。緩和が続いているところと、出口に向かっているところがあり、政策が相反する中では仕方ない面がある。
もう1つは規制要因。金融危機の後に規制が強まり、外資系の会社はバランス・シートのコストに関する見方が厳しくなってきている。また、米国で、まさに今行われているMMFの規制変更により、従来であれば本邦勢にドルを提供していた主体から、ドルを調達しにくくなっている実態がある。言葉を変えれば、ドルはあるもののそれをつなぐパイプが壊れてしまっているという環境ではないか。
今後とも本邦勢のドルのファンディングコストが高止まりする可能性は高いとは思うが、見ておかなければならない要因が2つある。1つは、本邦勢のドルの需要がどこまで続くのか。例えば、米国の長期金利が上がらない、若しくはクレジット・スプレッドのワイドニングが止まるといった要因により、単にドルのファンディングコストだけが上昇するのであれば、国内投資に対する魅力が高まるというタイミングがいずれ出てきてもおかしくない。
もう1つは反対方向で、ドルが更に高くなってしまう可能性であり、つまりはどれだけ海外勢がドルを提供し続けてくれるのかということである。現在の日本国債市場の短期ゾーンには、例えば、足下の米国のT-Billの金利がほぼゼロでリターンがないため、やむなく日本国債を買っていたような投資家も多く含まれていると考えている。FRBが何度か利上げをして、一定のリターンが米国のT-Billで得られるようになれば、過去数年間起こっていた資金のフローが根本的に変わる可能性があり、注意して見ておかなければならない。もっとも、こうした動きは、実際に起こってみなければわからないため、現状で言えることは、ドルの調達コストが高く、結果として円の短期金利がマイナスに転ずることも、グローバルな相場環境の中では致し方ないということだろう。
・カレンダーベース市中発行額が減額の方向性であるということ、日銀買入がグロスベースで増えること、ドル円ベーシスのワイド化に伴う海外勢からの需要が簡単には変わらないであろうことを踏まえれば、平成28年度の日本国債市場は、タイトな需給環境が続くだろう。
テクニカルな買い材料として、年末の担保需要や、12月から取引が開始される3月限の先物から日銀保有額の多い銘柄がチーペストとなることも挙げられる。強いて金利上昇の材料を挙げればFRBの利上げぐらいだが、来年は米国大統領選挙もあり、FRBがアグレッシブに利上げできるかは疑問である。欧州に関しては、QEを拡大傾向のため、金利上昇の材料になることはないだろう。
逆に、FRBが利上げすれば、ドル円ベーシスがワイド化する要因になるので、生保がヘッジ付外債投資から日本国債に回帰することや、海外勢が円転して日本国債を買う動きが強まることも考えられる。この意味では、いずれにしても、日本国債の需給環境はさらにタイト化していく方向にあると言えるかもしれない。
ドル円ベーシスについては、金融政策の方向性の違いと規制動向による影響がある。規制については、レバレッジ・レシオの関係から、バランス・シートのコストが強く意識されているほか、将来的にも、2018年から安定調達比率規制が導入されることにより、ドルの調達はより困難になってくる。これらは、ドル円ベーシスだけでなくレポ市場にも影響するものであり、通貨スワップのみならず、日本国債の市場にも影響が生じ得る。現状は、日本銀行のQQEが行われているため、規制動向に起因する流動性の低下が見えにくくなっているだけなのもしれない。QQEにより流動性が低下していると言われているが、QQEを止めてもなお、流動性がなくなったままということもあり得る。
したがって、流動性供給入札や日本銀行の補完供給オペにより、流動性を維持するサポートは今後も重要である。
・本年9月からベーシス・マーケットに大きな変調が生じているが、その要因の1つとして、日本国債の格下げが挙げられる。格下げがあっても、円金利自体への影響は生じていないが、本邦勢の外貨調達にその影響が顕在化しているということである。
日本銀行のQQEによって円金利が低い中で、資金が海外に流出していくこと自体は自然である。しかし、本邦銀行勢・生保勢の負債は、主に円の固定金利であることから日本国債中心の運用がなされてきたのであり、外貨調達を拡大しながら外債投資を進めることは、オフ・バランスの取引を拡大しているという見方にもなる。
通貨スワップのマーケットは、ヘッジ・ファンドやレラティブ・バリュー戦略を採る一部の投資家が主体であったにも関わらず、これだけ注目されること自体、金融市場の構造が歪み始めていることの表れとの印象を受ける。
ここ数ヵ月の変調は、1つの警鐘であり、変調の最大の要因は金融政策である。現在、低金利で安定調達が可能な日本の国債市場であるが、この歪みが潜在的に蓄積されたマグマを表していると捉えれば、長期的な観点から金融市場の異常さを少しずつ緩和する方向で議論されることが望ましい。
今後の見通しについては、来年度も円金利が低いまま推移する状況は変わらないと思われるため、より長期的な観点から政策を検討してほしい。
・大規模な日銀買入が継続し、短期ゾーンの金利低下がより長いゾーンに波及する構造も変わらない中、円金利が低位で推移する状況は、来年度以降も変わらないと考えている。
Source: Ministry of Finance.